■日時: 令和元年11月14日(木)  ■句会場: 流山市生涯学習センター  ■兼題: 通  ■参加者: 15名

合点 作      品 作 者 選     者
16 身の上を語れば長し帰り花 佐藤弘香 貞雄 いさむ ひろし むつみ 青史 節子  
16 小気味よき女の手締め一の酉 小泉欣也 貞雄 美智子 寿夫 いさむ 久美 ひろし 
16 小春日や柚子のかをりの舌下錠 小泉欣也 貞雄 〇美智子 いさむ 〇ひろし 〇むつみ 青史  
15 ユニセフに知る貧しさや柿たわわ 上原ひろし 美智子 ○寿夫 欣也 青史 鷹乃  
15 校庭に白線引かれ鵙日和 石川寿夫 貞雄 美智子 欣也 〇節子 〇鷹乃  
14 閉店を告ぐる貼り紙冬に入る 川上久美 美智子  いさむ  節子  かつひろ  
14 島々をつなぐ船の灯月の水尾 金田けいし 美智子 寿夫 欣也 〇久美  
14 バス停へ初冬の日差し巡り来る 川上久美 美智子 むつみ 節子 かつひろ  
14 逃げ隠れしてゐる気分大マスク 山青史 ○貞雄 美智子 久美 ひろし 
13 日々眺む見やう見真似の吊し柿 川上久美 貞雄  ひろし  青史  
13 千歳飴転ばぬやうに通りやんせ 鳥居美智子 貞雄  寿夫  久美    
13 しみじみと月の親しき夜寒かな 佐藤弘香 美智子  青史  節子  
13 枯蟷螂ここは通りのど真中 入江節子 美智子  ○いさむ  むつみ  
13 萍紅葉朝の池塘のそれぞれに 鈴木幸江 貞雄  美智子  久美  
13 母の忌や散歩日和の水澄めり 金田けいし 寿夫  かつひろ  鷹乃  
13 痩せ尾根の石くれ伝ふ秋の蝶 本島むつみ いさむ  欣也  かつひろ  
13 晩節の身ほとり重き冬仕度 佐藤弘香 美智子  久美  かつひろ  
13 秋麗を保ち暮れ初む山漆 鳥居美智子 寿夫  ○欣也  久美  
13 蜜柑山繋ぐ索道海光る 田中貞雄 美智子  〇青史  鷹乃  
12 茱萸採りの背伸びしたるや遠筑波 上原ひろし 寿夫  鷹乃  
12 冬隣無人のリフト山頂へ 入江かつひろ 貞雄  美智子  
12 すぐ切れる無言電話や神の留守 小泉欣也 ひろし  〇青史  
12 日を掬ひ日をとどめ居る石蕗の花 石川寿夫 美智子  むつみ  
11 小春日のどんぐりまなこ雨蛙 あかさか鷹乃 ○かつひろ  
11 新宿の空は鋭角雪の富士 石川寿夫 かつひろ  
11 折れ曲る刃突き立て枯蓮 いさむ 寿夫  
11 冬立ちぬこの国の根太腐ってる 山青史 美智子  
11 雁渡る剥がれるままに仁王像 入江節子 欣也  
11 病みし身の爪の白さよ一ㇳ時雨 あかさか鷹乃 寿夫  
11 沖津白波やつと日和の今朝の冬 田中貞雄 節子  
11 緒を切りし堪忍袋や柘榴割れ 金田けいし 美智子  
11 南京櫨殊に実生の紅葉濃し 鳥居美智子 貞雄  
11 木をつつく啄木鳥をりぬ今朝の晴 本島むつみ 美智子  
11 陽の燦々欅落葉の音の中 鈴木幸江 鷹乃  
11 ノーサイド頬の血ぬぐふラガーマン 山青史 むつみ  
11 冬の蜂野辺の静寂に包まれて いさむ むつみ  
11 嵐いくたびまがりくねりしコスモスよ 本島むつみ 寿夫  
6 「兼題句」通過する冬霧深き無人駅 小泉欣也 貞雄 美智子 ○いさむ 〇久美 青史 〇かつひろ  
4 「兼題句」穭田の芽に点眼の通り雨 田中貞雄 寿夫 〇ひろし 節子 〇鷹乃  
3 「兼題句」お忍びの衣通姫(そとおりひめ)か網鬼灯 鳥居美智子 貞雄  ○寿夫  〇むつみ  
3 「兼題句」檸檬の香身体髪膚貫通す あかさか鷹乃 ○貞雄  〇美智子  いさむ  
2 「兼題句」裏通り曲って遅れて冬めけり いさむ 美智子  ○節子  
2 「兼題句」山茶花や明るき風の通ふ路地 石川寿夫 ○美智子  ○欣也  
1 「兼題句」割れてゐる穫れぬ高さに通草の実 本島むつみ 美智子  
1 「兼題句」通勤のシルバーパスを手形とす 佐藤弘香 欣也  
1 「兼題句」古書落し手紙一本金木犀 入江節子 美智子  
1 「兼題句」寝返りを打つや邯鄲透き通る 金田けいし 美智子  
1 「兼題句」冬夕焼いまはむかしの「通りやんせ」 山青史 美智子  

令和元年11月14日  つげ句会 特選句評

☆田中貞雄 自由題・特選
「逃げ隠れしてゐる気分大マスク」(山青史)
  風邪やインフルエンザが流行期を迎えると着用するマスク(冬の季語)であるが、この句の大マスクは、伊達マスクのような気がして俳味を感じる。一方、「逃げ隠れしてゐる」を、黙り込むことも良い行動と思う時もあるので、「何も語らずに黙っていることは、すぐれた雄弁よりも大切」との言葉を思い出している。

☆田中貞雄 兼題句・特選
「檸檬の香身体髪膚貫通す」(あかさか鷹乃)
  この句は、酸っぱさと切れの良い香りの檸檬を、力強く際だてて表現した句。中七の「身体髪膚」は、体のすべての意味の四字熟語、下五「貫通す」も強い措辞である。好みとして、一方を生かして、「一身を貫通したる檸檬の香」として選んだ。


☆鳥居美智子 自由題・特選
「小春日や柚子のかをりの舌下錠」(小泉欣也)
  舌下錠にもいろいろあるのでしょうね。私は心臓のニトログリセリンを何年か処方されましたが柚子の香りはしませんでした。でも柚子の香りがしたら何だかホッとするような気がします。小春日の安堵感とも通い合う二句一章。

☆鳥居美智子 兼題句・特選
「山茶花や明るき風の通ふ路地」(石川寿夫)
  山茶花は、ほろほろとやさしく散って、椿の重くれとは異なる雰囲気です。「明るき風」が
  軽やかに描写しています。

「檸檬の香身体髪膚貫通す」(あかさか鷹乃)
   「貫通す」には少したじろぎましたが、それがかえって檸檬の香のさわやかさを直に伝えていて新鮮な発想。鋭い描写の一句と存じます。「身体髪膚これを父母に受く、あえて
   毀傷せざるを孝のはじめ」とおしえられたことを思うと雲泥の差。その意外さに驚かされました。

☆石川寿夫・特選句評
「ユニセフに知る貧しさや柿たわわ」(上原ひろし)
 国連児童基金であるユニセフ。何百万人に及ぶ子供の栄養不足、病気などに対し援助を行なっている。今「柿の秋」を謳歌している日本。路地の庭先で葉を落とした朱い柿が照り映えて、鳥達のついばむのを待っている。意外性の溢れる取り合せ。
 
 「お忍びの衣通姫か網鬼灯」(鳥居美智子)
  允恭天皇の妃(日本書紀)。艶色が衣を通して照り輝いていたという。美貌で和歌に優れ、和歌の浦の神社に祀られている。庭の片隅で網の目状になった袋の奥に輝きを放つ鬼灯。口に入れて鳴らした往時を思い起している。古典的なロマンに満ちた句。
  

☆当日出席者の評

小泉欣也特選
「秋麗を保ち暮れ初む山漆」(鳥居美智子)
  山野を歩いでいると、葉はもちろんのこと、茎まで真赤に紅葉している山漆に思わず目を見張ってしまう。山の端に日が落ちた後でも、その美しさを失わない山漆が見事に表現されている。
 
「山茶花や明るき風の通ふ路地」(石川寿夫)
  一読して、万太郎の「こでまりの花に風いで来たりけり」を想起した。この句は、冬晴れの路地に咲く山茶花に、一陣の風が吹き抜けたのであろう。その風を「明るき風」と捉えた作者の詩心に感心した。

川上久美特選
 「島々をつなぐ船の灯月の水尾」(金田けいし)
  瀬戸内の島々の景を思い浮かべます。いくつかの船の灯、そしてその水尾を照らす月。
  澄み切った秋の夜の抒情。

「通過する冬霧深き無人駅」(小泉欣也)
  霧深い夜、電車が通過していく無人駅。郷愁を誘うような懐かしさと寂寥感を伴う一句。
  
いさむ特選
 「枯蟷螂ここは通りのど真中」(入江節子)
  弁慶の最後を見ているようです。矢が何本刺さっても倒れず、じっと敵をにらみ返し、男の意地を絶命しても貫き通す。10センチの虫の自己主張。鎌を振り上げたまま道路の真ん中で絶命。急ブレーキを踏み、路傍へ移し冥福を祈りたくなる心境です。人間に生れ変ったら、世界を変える様な人になるかも知れません。

上原ひろし・佳作選
「身の上を語れば長し帰り花」(佐藤弘香)
  季語の「帰り花」の斡旋が良いと思った。長い身の上話を聞いてくれる人のいる作者の人柄の良さが思われる。ことによると、波乱万丈の半生なのかな。女性でもあり得ることでしょう。男性の私はそれを聞くことは出来ないけれど。 (女やもめに花が咲く)の俗諺が思い浮かんだ。

あかさか鷹乃特選
「校庭に白線引かれ鵙日和」(石川寿夫)
 幼稚園、小学校、あるいは中学校の運動会だろうか。朝早くの準備を終えた時分にすぐそばで、鵙が鳴いた。見上げる空は、真青。一瞬の静かさを捉えて気持の良い句。

「穭田の芽に点眼の通り雨」(田中貞雄)
  人の都合で早め早めに刈り取られるようになって久しい。「穭」は、俳句に出会ってから知った言葉で、昔は余りお目には掛からなかった。今は日本中、「穭田」の無いところはないのでは・・・。先月の新潟吟行でも、越後名物であった稲架掛けも見当らなかった。そんな穭田に来た時雨を詠んだと解釈し、「点眼」に降る雨の細かさと、優しさとを感じた。
  


次  回 : 令和元年12月12日 (木)
句会場 : 流山市東部公民館
兼  題 : 「  薄  」
特  記 : HP上の句会報は、句会後1ヶ月のみ、兼題句には「兼題句」を付します。
        自由題句の合点は二桁表示とし、翌月更新時に平常表記に訂正します。